ショックな事が有った。
きのう、F君が自殺したんだって。
何故?なんで死んじゃったんだろう・・・。
ちょうど20年前、F君と仕事した。
3ヶ月びっちり一緒だった。
まだ、名前もそれほど売れてない、駆け出しの俳優だった彼。
本当は歌舞伎界のBさんに、って言う話だったんだけど、
主役の3人の内の一人の女優といとこで、その女優が妾腹だっていうんで、
その脇になるのは嫌だとことわられた、テロリストの役だった。
その役に抜擢された彼。
「きのう、自販機ボコボコにしてやったんだよ!」と拳を突き出しながら、うそぶくF君。
「きょう学校でさー」
私「あれ?学生なの?」
「うっそー、どうせ俺、高卒だよぉー」
私「うそつき」
「俺靴屋に勤めてたんだよー2年くらい。それから劇団に入ったのさ」
私「へー」
「俺、猫背だし、背が高すぎてオバケみたいだろ?」
私「そんなことないよ。」
「俺、TVはこれきりにする。本編(劇場用映画)がいいのさー本編だよー。」
妹役の女優と抱き合うシーンの後
私「なんかイイ匂いがするう、移り香かぁ?」
「俺、手をずっとグーにしてたぞー」
私「?」
松田優作狂いの彼、よくモノマネしてくれた。
そっくり。
「優作さんみたいな俳優になりたい。」
私「なれるよ。松田優作よりずっといいよー。」
本気で言っていた私。
すぐばれるウソばかり言ってたけど、まじめな男、熱い男だった。
アイスクリームを買ってくれたり、遠い船の上から手を振ってくれたりした。
それから、彼は序じょに個性的な俳優として、活躍していった。
でも、「これきりにする」と言っていたTVもずっと出ていたし、
松田優作みたいになれたかどうかはわからない。
でも、彼にしか無い個性がある俳優になっていっていたはずだ。
まさか、こんな形で、松田優作みたいに「若死に」することになるなんて
想像もしてなかった。
不器用だったんだな。きっと。