温泉旅行と知多半島ランチ

温泉旅行と知多半島ランチをつづります。何故か料金を度々間違えられる、そんな星の下に生まれた女

私小説・白い絹の花 その1

わたくしは、虫と名の付くものが大嫌いでございます。
何ゆえこの世に存在するのか? とさえ思うのでございます。

が、そんなわたくしも生涯のうちたった一度だけ、
虫に恋してしまった事がございました。
わたくしが、まだ純粋無垢の中学生の時に
「蚕の観察」という授業がございました。
ひとり一匹ずつの蚕が配られます。
完璧に「芋虫」の様子の「蚕」が、
桑の葉と共に机の上に置かれました。
初めは、きゃあきゃあと言っておりましたが
桑の葉をバリバリ音が聞こえる程に食べる姿
またその葉についた丸い歯型を見ているにつれ
その愛くるしさに、不思議な気持ちが湧いてまいったのでございます。

「さ、さわってみたい・・・」

そっと手のひらに載せ、背中をつーっとなでると
それは まさに「シルクタッチ」 すべすべでございました。
顔を見れば、何処か微笑んでいるかのような趣きでございます。
その、無きに等しい体の重さ。
なんとはかなげで、弱々しい存在でしょう。

「あーなんて可愛いんでしょう、わたくしののカイコちゃん。」

わたくしは、わずかな時間の間に

カイコのトリコに

なってしまったのでございました。

筆箱に隠して家に持って帰り、心行くまでなでまわし 
桑の葉を食べる姿を永遠に見て居たい。
わたくしはそんな衝動にかられ、隙をうかがいましたが
もとよりそんな勇気のあるはずもございません。